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【講座レポート】第2回「攻めと守りのブランディング~知的財産権の違いを理解し味方につける~」

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知的財産の最新知識と権利保護法を学ぶ「攻めと守りのブランディング」講座。第2回講座では、まず、特許業務法人藤本パートナーズの石井隆明さんに意匠法の基礎知識と4月の法改正についてお話しいただきました。続いて、ロート製薬株式会社の宮崎智子さん、タイガー魔法瓶株式会社の高田宏さんが自社の事例を紹介。この後、再び石井さんが登壇し、1998年以来の大改正が予定される意匠法について講義。会場に集まった61名の参加者が熱心に聞き入りました。

意匠法の基礎知識を知っておこう
【講演】「意匠制度概要」
特許業務法人藤本パートナーズ パートナー 意匠部部門長 弁理士
石井 隆明さん

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2020年4月1日に迫る意匠法の改正。変更内容を理解するためには現行の意匠法の基礎知識が不可欠です。今回の講座は、年間600件以上の意匠案件を取り扱う特許業務法人藤本パートナーズの意匠部部門長を務める石井隆明さんによる意匠法の基本的解釈と登録の実際についての講義で始まりました。

石井さんは、左右に伸ばして簡単に接着できる貼り薬や卵ポケットが付いた即席麺、シックスパッドのトレーニング機器など、豊富な意匠登録の実例を紹介しながら、「大小を問わず、目で確認可能なものなら登録対象。逆に機械の中に組み込まれた部品など人の目に触れないものは原則として対象外になります」と説明。また、意匠には物品全体を対象とした全体意匠のほか、物品の一部のみを登録する部分意匠があり、商品や目的によって登録の使い分けが可能であるとのこと。

意匠登録の争点となる類否判断については、類否を決定する5つのポイントをスライドで紹介。

「用途や機能などの物品面と形状や模様などの形態面で判断されます。例えば同じ形状の車のデザインでも、乗用車と車のおもちゃでは用途や機能が異なるため非類似とみなします」

その他、画像の権利化、本意匠に付属する関連意匠制度、新規性の喪失、一意匠一出願の原則、組み物の意匠など、主に今回の改正で影響受ける現行法についても広く解説を行いました。

ロート製薬のデザイン保護戦略
【企業事例】「ロート製薬でのデザイン保護の取り組み」
ロート製薬株式会社
技術・知財アライアンス推進部 技術IPグループ リーダー
宮崎 智子さん

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続いて、ロート製薬株式会社の技術・知財アライアンス推進部、宮崎智子さんが登壇。

「技術を守るものは『特許』、ブランドを守るものは『商標』と、以前は『意匠』は社内でもマイナーな存在でしたが、『意匠』は技術にもブランド保護にも直接アプローチできる有用な知財という認識に変わってきています。昨今は知財ミックスという考えが浸透し、ブランディングにデザインがより活用されるようになりました」

出願の実例として、アニメキャラクターとのタイアップ企画から誕生したロートリセのハート形容器やキャップ部分、Vロートプレミアムのパッケージおよびキャップの出願例をスライドで紹介しました。

意匠出願を検討する際には、『権利取得の目的をはっきりさせること』『意思表示ができる権利取得を目指すこと』の2つを重視しているとのこと。

「意匠は出願してみなくてはわからないもの。トライ&エラーを繰り返して挑戦してみることが大切です。また、大きな改正がある意匠法も、改正ポイントを上手く活用できれば、今まで守れなかったものも意匠権で保護できるようになるでしょう」

4月の改正を踏まえ、積極的に意匠制度を活用することを勧めました。

タイガー魔法瓶の知財保護&模倣品との闘い
企業事例:「知財保護に関するタイガー魔法瓶の取り組み」
タイガー魔法瓶株式会社
ソリューショングループ 知財・規格チーム マネージャー
髙田 宏さん

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企業事例の2例目はアジア、北米を中心に世界展開を繰り広げるタイガー魔法瓶株式会社。Good Design賞の常連であり、2017年には特許庁の知財功労賞を受賞し意匠活用優良企業に選ばれた同社の知財ミックス戦略を、知財・企画チーム マネージャーの髙田宏さんが説明しました。

「タイガー魔法瓶株式会社では、タイガーマークを中心に国内で500件、海外数十か国で400件以上の商標を登録し、商品化するデザインは図柄を含めてすべて意匠権で権利化しています。オリジナル商品のポーチのキャラクターデザインを模倣された経験から、商品を入れるポーチのキャラクターにも一つ一つ著作権を設定しています」

しかしながら、商標、商品そのもののデザインの他、商品の箱に至るまでそっくり見た目を真似たコピー品など、タイガー商品の模倣品は後を絶ちません。

模倣被害を最小限に抑えるため、知的財産保護法が及ばない案件では、最終手段といわれる不正競争防止法や品質表示法を活用。また、空港で類似品を摘発する税関登録対策、ネットショップで販売されるコピー品のEC削除、現地代理人を通した交渉など、事例に合わせた対策法を検討・行使して自社商品を保護していると語りました。

意匠法はこう変わる! 4月の改正ポイント
「予定されている意匠法改正」
特許業務法人藤本パートナーズ パートナー 意匠部部門長 弁理士
石井 隆明さん

第2回講座の後半のメイントピックスは4月の意匠法改正。特許業務法人藤本パートナーズの石井隆明さんが再登壇し、主な改正点の解説を行いました。

石井さんは、まず初めに画像意匠の保護対象の拡大について言及。「現行の意匠法でも物品に紐づいた表示画像や操作画像は保護の対象になっていましたが、改正後は物品と関係なく画像そのものを意匠として登録できるようになります」。ウェブサイト上の商品購入用画像や操作ボタンとして機能するアイコン用画像、医療用測定器の測定結果表示画像、壁に投影された時刻表示画像など、新たに加わる対象例をスライドで示しました。

新たに意匠登録が可能になった建築物については、『土地に定着した人工構造物』である必要があり、仮設テントや動産として取引される船舶、自然の山や川、主な意匠を自然に頼ったスキーゲレンデなどは対象外。また、全く同じデザインであってもガスタンクとホテルでは用途が異なるので類似とは見なされないなど、従来の類否判断が適用されることを説明しました。

また、内装に関しては、「主な保護対象は店舗や事務所などの施設に設置されるインテリアデザインやディスプレイデザインなどです。内装の意匠と認められるためには、空間を仕切る、床や天井、壁のうち何れか一つが必要で、テーブルやイスの家具類のみ、什器類のみは対象になりません。動物や植物、蒸気や砂塵、香りなども対象外ですが、パーティション代わりに使用している観葉植物のように、継続的に固定するものであれば意匠の一部と認められることもあります」。

関連意匠の出願についても大きな変更が。

「現行法では本意匠の公報発行日の前まで(約8か月間)に関連意匠を出願しなくてはならなかったのに対し、改正後は本意匠の出願から10年以内であれば関連意匠が出願可能になります。また、改正後は本意匠だけでなく関連意匠のみに類似する意匠も登録できます」

締めくくりに、「意匠法改正の情報に引き続き注意し、自社だけでなく取引先や関連企業にも意匠法の改正があることをぜひ伝えてあげてください」と参加者に呼び掛け、意匠法改正に関する70分の解説を終えました。

全講演の終了後に設けられた質疑応答タイムには、「意匠法改正によるデザイナーのメリットは?」「建築意匠法に違反した場合の責任の所在は?」「建築物の意匠権に抵触した場合の責任の所在は?」「関連意匠の有効期限は?」など、具体的な質問が寄せられ、22年ぶりの意匠法の大改正に対する参加者の関心の高さが感じられました。

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左から宮崎さん、石井さん、高田さん

■お断り:講座「意匠制度概要」「予定されている意匠法改正」は、特許業務法人藤本パートナーズの野村慎一さんから、同法人の石井隆明さんに講演者が変更となりました。

■日時:2020年1月15日(水) 14:00~16:30
■会場:大阪産業創造館(大阪市)

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