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【セミナーレポート】関西・フランス デザイン交流セミナー

大阪デザインセンターでは、今年度、経済産業省の補助を得て、「国際デザイン交流による地域デザイン力強化のためのプラットフォーム形成事業」(関西・フランス デザイン交流プロジェクト)を実施しています。
11月8日(火)に、プロジェクトの一つとして「関西・フランス デザイン交流セミナー」を開催しました。
(参加者131名 グランフロント8階) そのセミナーの内容をすこしだけご紹介します。


第1部  「日仏デザインの類似点と相違点」
講演1 講師:ジェラール・キャロン 氏 
フランスデザイン振興協会 国際委員会 委員長
ヨーロッパ パッケージデザイン協会 理事長
Agence pour la Promotion de la Creation Industrielle(A.P.C.I)
領土、歴史、宗教、文化、教育など、文化的な相違点を理解しなければならないが、フランスと日本ではデザインやぜいたく品の嗜好性で似ている部分もある。
フランス人デザイナーは、日本の製品の特徴を、簡潔、伝統と現代の融合、緻密な完成度、などととらえている。
「私たちは違う。しかし、すべてを共有できる。」という結びでした。
ヨーロッパ パッケージデザイン協会 理事長を務め、各国からの応募作品を審査してきた経験、150回の来日経験から裏打ちされた、含蓄のあるお話でした。
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講演2 講演者:フィリップ ピコー氏(カルフールグループ グローバルデザインディレクター)
これまでのTexas Instrumennts、DECATHLON などでのプロダクト経験をもとに、
「デザインは、企業の総和を通じて発展し、企業はデザインの総和を通じて発展する」
そして、Carrefourのデザイン事例を通して、
「デザインは企業業績を改善する。デザインはブランドイメージ、消費者経験、製品革新のポートフォリオを
表現するものであり、中長期的な投資である。」
と結ばれました。
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第2部 パネルディスカッション「日本とフランスのデザイン・企業のクロスコラボレーションの可能性」
コーディネーター
石本和治氏 1031ビジネスコンサルティング
パネラー
ジェラール キャロン 氏 フランスデザイン振興協会 国際委員会 委員長
フィリップ ピコー 氏 カルフールグループ グローバルデザインディレクター
コンスタンス ギセ氏 インテリアデザイナー
羽場 一郎氏 (株)イデア 代表取締役
玉井恵理子氏 (株)タピエ 代表取締役
ピコー氏 : カルフールの商品構成の戦略として、価値観・商品を民主化して多くの人々にアクセスしてもらえる「正当のデザイン」をめざしている。
デザインシンキングは、デザインそのもの。コンセプトではなく「利用」「使用」が重要であり、使用上の制約がなくなるというのがイノベーション。
「どんな商品?」というよりも、ユーザー観察ののちにそこへのアプローチを考えて欲しい。
日本には工芸のノウハウはあるが、そこからある程度距離感を置かないとイノベーションにならない。
羽場氏 : 同感だ。生活の中の観察。「もったいない」「礼節」文化的価値観を発信し、コンパクト・スマートをめざしている。
日本の伝統工芸の素材も技術も元はと言えば里山生活文化の知恵の産物である。
里山が産んだモノを慈しむサスティナブルな日本固有の生活文化とフランスのラグジュアリーなデザインカルチャーをクロスコラボレーションさせることは十分可能である。
キャロン氏 : ヨーロッパで日本製品の評判は大変高い。クオリティが高く、まじめにものづくりをし、アフターサービスもよい。
デラックスな部分でも日本の工芸作家は多いが、ブランド創設に至らずに成功していないので、この部分での補完関係がありうる。
ギセ氏 : ハイデザインとアート性の関係については、アートとテクノロジーについて限定せずに、「使われる」という観点から、インスピレーションを空中からキャッチしている。
日本に滞在していた経験から、日本にはクオリティや細部の完成度に加えて、動作の美しさがあると思う。重力と戦い、ダイナミックに混ざり合う「ムーブメント」を意識している。
「カワイイ」のイメージは、優しさ、子供っぽさ、ガラクタ、使い捨てのイメージもあるので、「カワイイ」だけでなくもっと多くの言語表現が必要だ。
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玉井氏 : 「ハンドメイド商品のキュレーションをやっており、「カワイイ」をテーマにパリで展示会を開催して、大きな反響を得た。カワイイの文化論は、かわいそう、はかなさ、から来ている。フランスの人は、ゆったりと取り組み、熱心で、ぶれない。日本人女性は商品選択で直観判断するが、フランス女性はロジックを求めるように思う。
日本の女学生の半分は、自分を「カワイイ」と思われたくないと思っている。表現の方法を考えていきたい。
様々な意見が飛び交い、今後についても
・ヨーロッパ展開時には相手の生活、暮らしぶりを知ること、心の交流が必要。(玉井氏)
・お互いにコンセプトを理解し、共有できる文化がある。(ギセ氏)
・デザインする上で、使用者を理解することを重視している。メソッドは多い。(キャロン氏)
・クライアントの満足、持続的な開発に向けてデザイナーには謙虚さが必要。(ピコー氏)
・世界の中で、日本文化の一番の理解者はフランス人だと思う。ヨーロッパ展開の課題は価格と物流コスト。
 デイリープロダクトは関税の面で不利である。ラグジュアリーマーケットへのアプローチが必要。(羽場氏)
など、両国の交流に期待する言葉で締めくくられました。
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第3部 フランス人デザイナー3人によるプレゼンテーション
ダビド モルー 氏 プロダクトデザイナー
http://www.davidmoreeuw.com/fr-objets.html
コンスタンス ギセ 氏 インテリアデザイナー
http://www.constanceguisset.com/en/
アントワーヌ フリッチ 氏 インダストリアルデザイナー/デザインスタジオ協同経営者
https://fritsch-durisotti.com/web/


日本では、フランス人デザイナーの生の声、実際の活動内容を知る機会がほとんどないので、参加者にとっては、大変貴重な機会でした。特に、理論構成よりも、コンシューマー・ファーストを皆さんが徹底していることを、改めて、理解出来ました。
このセミナーは、最初の段階であり、交流を深めるためには、さらに具体的な意見交換、アドバイスが必要です。
来日団いただいたの5名のうち、2名のデザイナーは、さらに2週間、大阪に滞在してデザイン交流を深める予定です。
今回、フランスと関西との間で、デザイン交流の枠組みが出来上がりましたので、大阪デザインセンターとしても具体的な交流が進むように、務めていきたいと考えております。
詳しくは当センターHPの国際交流プロジェクトをご覧ください。
http://www.osakadc.jp/exchange-meeting/design-project.html

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