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第1回「攻めと守りのブランディング~知的財産権の違いを理解し味方につける~」レポート

3回シリーズの講座「攻めと守りのブランディング」、初回は京都での開催です。会場の京都経済センターには、企業の知財担当者やデザイン関係者、広報担当者など39名が集まり、知的財産活用のスペシャリストの話に耳を傾けました。
 
 
知財で参入障壁作りを
「活用しましょう!知的財産」
近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課 知的財産室
工業所有権活用専門官  田中 康資 さん

 
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トップバッターは近畿経済産業局知的財産室の田中康資さん。まず、特許・意匠・商標など複数の知的財産を活用して企業利益を守り、商品のブランド価値を上げる知財ミックス戦略の基礎を説明。続いてその成功例として、しょうゆの鮮度を保ち、ボトルを押すだけでしょうゆが出せる「やわらか密封ボトル」を採用したキッコーマンの「しぼりたて生しょうゆ」の実例を紹介しました。
 
「従来品と比較して37%も価格が高い『しぼりたて生しょうゆ』が、大ヒット商品として売れ続けているのは、競合品が出ないように複数の知的財産権を活用して商品を守っているからです。商品の価値とブランドを守るには、特許・意匠・商標などの知的財産を戦略的に活用して、参入障壁を作ることが大切です」
 
講演の後半では2020年4月に予定されている意匠法の改正ポイントに言及。デザインが多様化している現在の社会状況を踏まえ、建物の外観・内装のデザインやクラウド上に保存されるデジタルデザインなどが意匠法の保護対象に加わること、意匠権の残存期間が25年に延長されること、関連意匠の登録期限が延長されることなど、主な改正点を紹介しました。
 
 
特許・意匠・商標で守る!
企業事例:「グンゼの知財権ミックス戦略」
グンゼ株式会社
経営戦略部 知的財産室 室長  北浦 達朗 氏

 
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2つ目の企業事例では、グンゼ株式会社の北浦達朗さんが同社のヒット商品「AIRZ」の知財戦略を紹介しました。

プロボクサーの井上尚弥さんをイメージキャラクターにした同商品は、ボクサーブリーフのウエストゴムをなくしても、心地よく体にフィットする画期的な男性下着として話題を呼び、2019年10月には累計売上100万枚を突破。

ウエストゴムをなくしてもフィット感を保つアルゴウェーブカット設計技術および製品特長である①ズレない、②締め付けない、③着脱しやすい、④ダレないという4点についてエビデンスをとり、国内で7件の特許出願をしています。

「AIRZに関する意匠権は国内では7件登録されており、国外でも2件の意匠出願をしています。競合他社へのけん制と模倣品対策のために意匠を出願しますが、その際は必ず出願前先行調査を行います」

先行調査は、他社の意匠を侵害していないかを確認するのが目的。AIRZの先行調査で、ウエストにゴムがない男性下着が他社商品に見つかったものの、縫製部や裁断部の形状などデザインが異なるため非類似品とみなされ、無事に意匠登録に至ったと説明しました。

また、商標は空気の意のAIRと究極の意のZを組み合わせた「AIRZ」で出願。類似の商標との違いを証明するための手続補正書や意見書の提出を経て、2018年8月に登録することができました。

大ヒット商品の知財戦略を知る貴重な機会となった北浦さんの講演に、参加者はみなメモを取りながら真剣に話に耳を傾けました。
 
 
知財を守ることが生命線に
企業事例:「ICIデザイン研究所の特許・商標・意匠権の知財ミックス戦略」
有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所
代表取締役  飯田 吉秋さん

 
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企業事例の1例目として登壇いただいたのは、数々のデザイン賞や発明賞の受賞歴があるICIデザイン研究所・代表取締役の飯田吉秋さんです。
 
「脳梗塞になった父親のために」開発した『シリコンキャップ(Kiss)』、子どもの創造力をはぐくむ知育玩具『ノシリス(nocilis)』、子どもののどつき事故を予防する『曲がる歯ブラシ』など、自社開発の商品を例に挙げ、知財ミックス戦略のもと商品開発をおこなう実例を示しました。
 
「我々のような小規模事業者が生産設備を持たないファブレス事業を行う実験として、これらの事業化をおこないました。そうした企業にとって事業の要となる視点や発想を知財化することは、会社の存続にも関わるほど重要なことです」
 
「商品の目的が明確であれば意匠や商標も取得しやすくなります。将来に向かって企業として何をストックし、何を戦略の柱にするのかを明確にして、知的財産の戦略を立てることが大切です」
 
多くの特許取得や意匠・商標登録の実績があるだけに、重みのあるアドバイスです。
 
創作者の証と責任の証を得ること、ブランディングに役立て経済的価値を高めること、企業規模にあわせた事業化が持続可能な企業活動へとつながることなど、知的財産を取得する意味を語り、知財戦略を事業に役立てることの大切さを強調しました。
 
参加者は、同社の独創性とそれを守る動きの確かさに、大いに引き付けられていました。
 
 
デザインの保護と活用でブランドを強くする
講演:「デザインのチカラ、活かし方 ~デザインの保護と活用~」
大阪工業大学大学院
知的財産研究科 教授  山田 繁和 さん

 
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大阪工業大学大学院特任教授の山田繁和さんは「デザインの保護と活用」をテーマに、調査事例と企業実例を次々と説明。
 
模倣被害に遭っている国内企業は、なんと1万1643社にも(2019年7月)。また、2018年度模倣被害報告書の調査結果によると、模倣品の製造販売国の第1位は中国であり、品質や使いやすさで世界的に評価の高いMade in Japanの製品が一番の模倣のターゲットになっているとのこと。
 
2025年に万国博覧会の開催を控える大阪。山田さんは大阪の産業や経済の活性化に期待するとともに、知的財産の流出にもいよいよ気をつけねばならないと話します。
 
「税関の摘発で最も多いのは、模倣が比較的容易な商標権や意匠権。『うちの商品は、おいそれとまねできないから大丈夫』と考えるのは間違いです。外観だけをまねて中身が全く違うコピー品だったとしても、自社商品の希少価値が下がってブランド力は失墜します。知的財産権は取得して終わりなのではなく、取得してからその後どのように行使するかが大切なのです」
 
また山田さんは、ブランドの構築の際には新たな機能や用途が一目でわかるようにデザイン戦略を立てることが大切だと説明。外観を全く変えずにエンジンや構造のみをバージョンアップした車を作り、価格を15万円ほど上げて販売したところ、全く車が売れなかったという海外の自動車メーカーにおける失敗例を挙げ、(消費者に)違いをわからせるためにデザインを使用することは大切だと説きました。
 
「全国の中小企業にデザイン活用の目的に関するアンケート調査を行ったところ、近畿では『商品に新たな機能・用途があることを伝えるため』という回答がトップでした。この回答が一番に上がるのは全国で近畿のみ。デザイン活用の目的が明確な企業が多いのです」と、近畿の企業を評価。さらなる知的財産とデザイン活用にエールを送りました。
 
製品やサービスの開発においては、人々が欲しがっているウォンツや人が必要としているニーズを見つけて解決法を見出すこと、マーケディング、知的財産の活用、販路の確保、広告、検証や改善、ブランド構築など、10の実施項目があると説明。「10の項目のうち、社内で実施できていないものがある場合は、そこを改善することで活路が見出せる可能があります」
 
知的財産を利用したデザイン活用の実例として、ソニーの意匠権マップ活用例をはじめ、サロンパスのPI(プロダクト・アイデンティティ)を利用したブランドアイデンティティの形成例など、具体例を豊富に紹介。とくに船舶用品問屋から国内ナンバー1のキャンピング用品メーカーへと変貌を遂げたロゴスコーポレーションの例に注目し、船舶用品のパッキンや帆の技術を使いつつ、新しいビジネスを切り開き、さらに特許や意匠・商標などを駆使してブランド構築を成功させた同社の戦略を、資料とともに解説しました。
 
■日時:2019年12月13日(金) 14:00~16:30
■会場:京都経済ホール(京都市)
 
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左から北浦さん、飯田さん、山田さん、田中さん。

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