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「美的感性と美的表現技法の修得『ビジネスに生かす美的感性』~共感を育む 価値を高める~」レポート

「美的感性と美的表現技法の修得『ビジネスに生かす美的感性』~共感を育む 価値を高める~」レポート
片野田旨侶氏・荻野丹雪氏「建築空間に息づく美意識~アートを通じて人はつながる~」
2019年12月17日(火) 15:00~17:00
 
ゲスト:
片野田 旨侶(かたのだ しろう)氏
ファインアート株式会社 代表取締役
 
荻野 丹雪(おぎの たんせつ)氏
墨象家
 
会場:
ギャラリーファインアート
 
 
実物に向き合った経験がアートの素養になる
 
 
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片野田さん(左)と荻野さん。この日は、荻野さんの近作が何点も展示されていました。
 
現代アート専門の「ギャラリー ファインアート」(大阪市西区)のオーナーであり、企業や病院、ホテルといった人が集まる空間のアートコーディネートも手掛ける片野田旨侶さん。サントリー「響」やNHK大河ドラマ「新選組!」の題字などで知られ、抽象画も次々と発表する荻野丹雪さん。ファインアートを会場に、デザイン、アート、感性、そしてビジネスにも目線を送りながらトークの輪が広がっていきました。
 
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提案段階のスケッチもリアリティを追求(片野田)
 
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ファインアートは、1972年創業。片野田さんが父親から引き継いだ95年頃までは、洋画や日本画、彫刻などを中心に扱う会社でした。95年以降、バブル崩壊の影響もあり、「今後は現代アートが注目を集めるだろう」と考えるようになった片野田さん。ギャラリーは次第に現代美術が占めるように。予見どおり、「2010年には現代アートの市場価値が洋画や日本画の具象絵画を総合的に上回ったんです」。

「現代アートに比重を置き始めた当初から、"提案"スタイルを貫いてきました」と話す片野田さん。クライアントに提示した資料をもとに、次々と具体的なエピソードを紹介してくれました。
 
 
<病院>

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デイルームごとに一点ずつ、荻野丹雪さんによる、メッセージ性のある文字作品を飾ることを提案。通常のプレゼンテーションでは、選んでもらえるよう2案を用意するそうですが、「この空間にはこの作家さんしかいない」という場合は一案で。この時も、荻野さん一本での提案だったとのこと。
 
 
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小児病棟へは、インタラクティブな試みを取り入れた独自性の高い提案を。入院している子どもと、関連の園に通う園児らに、作家 谷山恭子さんと一緒に絵を描いてもらい、その絵をもとに作家がステンシルで壁画を制作するというものです。完成後は、自身がかかわった絵を見に来る子どももいて、広がりのある展開が実現したそうです。
 

<総合空調企業>

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空調機を主力製品とする企業の技術・イノベーションセンターが舞台。暮らしをイメージできる文字作品を提案しました。具体的には、荻野さんが約15センチ幅のローラーで1枚に1文字ずつ書いた「風」「水」「花」「人」を額装するというもの。それぞれ2メートル四方というダイナミックな作品です。

「提案書用のイメージスケッチは、先生方に無理をお願いして描きおろしていただきます」と、片野田さん。「今まさに提案している空間のために描いたスケッチがあるのと、過去事例を(企画書に)置いておくのとでは、リアリティがまるで違うんです」

提案までに、できる限りヒアリングもして「お任せします」というクライアントの意識に潜むイメージにアクセスし、取り入れていくのも片野田流。空間の規模にもよりますが、提案書は最低2週間の作成期間を要するとのことでした。
 
 
コミュニケーションを成り立たせるのが商業デザイン(荻野)
 
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時にユーモラスに、テンポよく話を展開する荻野さん
 
「墨象家」の「墨象」は、墨を使って文字や版画のほか抽象的表現など広い範囲で作品をつくること。表現の自由度が高いので、荻野さんは自らを「墨象家」と表しています。
「アートはビジネスの中でどう生きているか...。作品に向かう時、そんな難しいことを考えているわけではありませんよ」と笑いを誘いつつも、商業デザインと純粋なアートとでは、はっきり違う点があるといいます。
 
商業で受け入れられやすい目安の一つが、型に忠実であること。
筆を紙にトンと下ろしてスーッと横に伸ばす。左側へはスッとはねて、右側へは止めて上方向にはねる。これでないと、「書としていかがなものか」という意見も少なくないのだとか。
 
依頼を受けて制作する場合、「作品は依頼主である企業と多くの方とを結ぶコミュニケーションツールになっていなければいけません」。制作する時は、①誰もが読める文字であること、②商品やターゲットに合った雰囲気であること、③文字を構成する線の質、という順に重点を置いて幾通りものパターンを考えるそうです。
 
有名な"あの字"はどうやって生まれたのかについても、ざっくばらんに話してくれました。
 
 
●サントリー「響」

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「郷」の部分に重心を置き、「音」は小さく。「音」を大きくしっかり書くと安定感が生まれるが、あえて逆にして不安定さゆえの緊張感を表現。同時に「音」のうち、長く伸ばした横線に、不安定な文字を支える翼のような役割を課している。「この字は出世し過ぎて、もう作者はどうこう言う立場にはない、という感覚です(笑)」
 
 
●NHK大河ドラマ「新選組!」

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時代背景と若々しさの表現に選んだのは版画の手法。文字には遠近もつけている。商業用でありつつ、純然たる書の顔も持つ題字に仕上げた。「!」は大勢の人に見ていただきたい、という願いをこめた脚本家(三谷幸喜さん)の案。
 
 
アートでは、作家の血肉や神経が線になる(荻野)
 
一方の純粋アート、100%作者の思いで作れるものについては、「前提として線の質を重視します」と荻野さん。線の質とは、「作家の血肉や神経を感じられるかどうか、ということ」。

従って、①作品を見た時に感じるもの、②雰囲気、どんなフレーズにするか、③読める文字かどうか、という順に重要なのだといいます。例えば、漢字の「十」という文字。「造形的に美しければ、アートの世界では二本の線を交わらせなくても構わない」

では、商業デザインの場合は、どのような考え方に?
「商業デザインとアート、どちらに傾きすぎてもいけません。ただ、商業の場合、最終決定権は依頼主にあります。いろいろな要求に応えるうちに、自分の原点を見失ってしまうことも...。アートに傾倒しすぎると多くは販売に苦戦し、お金の面で苦労する。重要なのはデザインとアート、場面ごとに思考を切り替えることです」
 
 
ある音楽家は作曲のために画廊を巡った(荻野)
 
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Q.「抽象芸術」がよくわかりません。個人で好き嫌いは言えますが、どちらが良いとなると分かりません。現代アートを判断する助けになるようなヒントがあれば教えてください。
 
片野田さん:
私は抽象芸術には明らかに段階があると思っています。一見、適当に描いているように見えても、駆け出し作家さんと熟練作家さんとでは大きな違いがあります。作品が持つオーラや画面構成...言葉で説明するのは非常に難しいのですが。
 
その難しさは、アートを見る時に客観性と主観性が働く点にあります。私が「良い」と思っても、お勧めした方が関心を持ってくださらないと、そこで話は終わってしまう。その方の美意識と作品とが共鳴しないと。
 
画廊側としては、もっと見る目を養い、クオリティが高いものをご紹介・ご提供していきたいと思っています。
 
荻野さん:
「どこを見るか」、それが難しいんですよね。私は評論家の方にお任せすることがあります。皆さん、うまく書いてくださるんです(笑)。私の作品に対して「緊張した画面が静かな境地につながり、新しい世界に飛び立とうとしている」といった、私が思ってもいないような難しいことを書いてくださったりします。そうすると、立派な人に見てもらえることがある(笑)
 
Q.デザイナーさんに商業デザインを依頼する側の者です。お願いする時、ブランド背景やターゲット、クライアントの情報はどのくらいお渡しすればいいものでしょう。
 
荻野さん:
私がご提供するのは全体のデザインで考えると素材のところ。その前提でお話しします。
前もって打ち合わせをすると先入観や思い込みが働くと思っていて。山なら山、書く文字が決まっていたら、それだけお聞かせいただければ私の場合はイメージをふくらませていけます。
 
全体を考える時は、ターゲットは男性か女性か、量販レベルなのかハイグレードなのかといったことは伝えるとよろしいかと思います。
 
と、荻野さんが結んだところで参加者からも意見が。
「プロダクトデザイナーをしているのでご参考までに。私はお持ちの情報を全ていただきたいです。多くの場合、発注側はデザインに必要な情報を正確に把握できていないから。必要かどうかはこちらで判断するので、情報はあるだけ教えてほしいです」
 
Q.ビジネスの世界で、アートの持つ感性的なものが注目されています。普通の人がアートの素養を高めるにはどういう教育なり、経験を積めばよいのでしょう。
 
荻野さん:
いろいろなものを見ていただくこと。書だ、絵画だ、ではなく。
 
ある音楽家の先生が曲を作る時に、画廊を見て回ったと聞いたことがあります。そのご経験が曲のどの部分に反映されたかは分からないのですが、おそらく感覚的なもの、艶っぽさや思いとかに表れたのではと思っています。ですので、彫刻や舞台、音楽、そういったものから興味を広げていくとよいのかなと。
 
片野田さん:
情報社会ですので、知る手立てはたくさんあると思います。気をつけていただきたいのは、パソコンなど媒体を介して見て、分かったつもりになってしまうこと。
 
画廊や美術館に足を運び、リアルな感覚にふれるのとでは感じ方が全く違う。そういった経験の中で、ご自身の感覚も変化していくと思います。
 
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参加のみなさんは、熱心に荻野さんの作品を鑑賞していました。
 

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