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『話せば、燃える。TAKIGI Talk Live』 レポート vol.3 中尾香那氏「これからの『和』のデザインをもやもや考える」

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vol.3「これからの『和』のデザインをもやもや考える」
2019年11月28日(木)18:00~20:00
 
ゲスト:
中尾香那氏
電通関西支社 アートディレクター
 
コーディネーター:
藤脇慎吾氏
有限会社フジワキデザイン 代表
京都市立芸術大学 非常勤講師
 
聞き手:
越田英喜
一般財団法人大阪デザインセンター 理事長
 
 
人が手を動かして作る。その熱量に価値が生まれたらいい
 
 
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左から中尾さん、藤脇さん、越田
 

「TAKIGI Talk Live」3回目のゲストは、広告グラフィック、商品開発、パッケージ、施設空間デザインなど幅広い領域のアートディレクションに携わる電通関西支社アートディレクターの中尾香那さんです。会場は、これまでと同じく大阪・堺筋本町の丸一商店株式会社1階ギャラリー。参加者は31名でした。
 
中尾香那さんと、コーディネーターの藤脇慎吾さん、越田英喜・当センター理事長は京都市立芸術大学ビジュアルデザイン科を縁とする三世代。最初に越田理事長が、「今の時代は先に何かがありそうなんだけど、見えにくい。ワクワク感があるとともに、"もやもや"したものを感じます」と、中尾さんの演題にからめた挨拶を。
 
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伝統は「秘伝のタレ」
 
中尾さんは、なぜ「和」にこだわるのか―。
 
最初のきっかけは17歳の時に海外留学し、その時に「日本のことをもっとちゃんと知らなくちゃ」と感じたことだと言います。その後、大学で学び、電通で仕事をするようになってから考えたのが、「伝統というのは数百年のナレッジ。時代をこえて人がかっこいい、楽しい、美しい、心地よいと思うものの濃縮液であり、秘伝のタレのようなもの。捨てたらもったいないし、もう一度作るのは難しい」ということ。それなのに、技術としての和工芸は70年代と比べて生産量は4分の1、従業員数は3分の1まで減っているのだとか。
 
「和」のデザインを扱う上で、中尾さん自身が気をつけていることは、「"和っぽい"を目指さない」こと。なんとなくの和テイストではなく、これからの「和」を作っていくために脱・既視感を目指す。また、「和オタク受けを目指さない」。内輪受けで作るのではなく、普通の人にいいと思ってもらえるものを作ること。さらに、「"なんとなく"で工芸とコラボしない」。技法の良さを知り、それにしかできないことをする。リスペクトはするが変えるところは変える、という3つのポイントを挙げました。
 

続いて、中尾さんはそれらの基本を踏まえて世に出した作品を紹介しました。
 
「太秦江戸酒場」は、「江戸時代にタイムスリップしたような気分で飲める幻の酒場」がコンセプト。太秦の役者さんたちとお酒を飲めるだけではなく、お客さんが着物で来て楽しめるようにフォトスポットを作り、京都の職人やアーティストを招き、フライヤーも瓦版風のデザインで作成。日本酒だけではなく京都の工芸や伝統芸能、着物業界を巻き込んだイベントとして、リピート意向98パーセント、チケットは毎回ほぼ完売の、京都の名物イベントとなりました。
 
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ノスタルジックなグラフィックを引き立てるコロタイプ印刷のポスター
 

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「岡崎明治酒場」は平安神宮をはじめとした京都岡崎エリアで開催。こちらのこだわりは、「明治時代の印刷技術でポスターを作る」ということでした。多色刷りのコロタイプ印刷(※)で知られる京都の印刷会社の協力を得て、明治デザインへのオマージュとして作り上げたポスターは、中尾さん自身が烏口を使って描き上げた作品をベースにしています。※現在では主に文化財複製に用いられる印刷技術。
 
3例目は大阪城公園内の商業施設「JO-TERRACE OSAKA」。中尾さんはコンセプト、ロゴ、ネーミング、施設イメージに至るまで関わったとのこと。キーカラーを赤と黒と金に定め、公園ならではのリラックス感と大阪らしさを残しつつ、洗練された雰囲気でまとめあげました。特にこだわったのは、侍や姫とともに写真が撮れるフォトスポットだそうです。
 
「立山の水 さらら」(ボトルウォーター)のリニューアルでは、富山県らしいパッケージにするため、越中八尾和紙をスキャンしてマット加工したラベルや、商品コピーを短歌で表現するなどの「和」を取り入れて人気商品に仕立てました。
 
 
デジタル疲れをなんとかしたい
 
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香時計がいくらなら買いたい? 想定価格に挙手する参加者たち。
 
最新作の「香時計」は、DENTSU JAM! × X-tech Managementによるモデルケースプロジェクトとして展開中。
 
「私はIoTプロダクトで欲しいと思ったものは、実はあまりなくて、むしろ"デジタル疲れ"をなんとかしたいと思っていました」。中尾さんのそんな素直な気持ちから出てきたのが、約1時間で燃え尽きるように設計されたお香セット。
 
この企画は渋谷パルコのBooster Studio by CAMPFIREでの展示のほか、ウェブマガジンJapaaanなどで紹介され、現在クラウドファンディング中、パートナー企業も探している最中です。
 
企業が作った商品を電通が広告するというこれまでのパターンとは異なり、この事例は電通が商品を考案して、クラウドファンディングなどを通して発表して購買層の反応を確かめてから、企業と電通が共同で商品を作るという流れ。中尾さんが「この商品、いくらなら買いますか? 」とアンケートを取ると、会場からはなかなかに幅広い値ごろ感が示され、大いに盛り上がりました。
 
 
ロジカルの限界の先へ
 
中尾さんのトークを聞いての越田理事長の感想は、「一言で言うと、もっと早く会いたかった!」。「デザイナーは、今までは仕事を頼まれて、それに従ってやることが多かった。けれど、事業を構想できるデザイナーを育てることがこれからのミッションなんです。これをデザインセンターでは事業構想デザインと呼んでいます。中尾さんが最後に挙げてくれた事業例はまさにこれに当たりますね」
 
「コンセプトありきのロジカルシンキングの欠点はプロトタイプが全部同じになること」と越田理事長。「デザインセンターでは子どもの教育もやっているんですが、その発想力はすごい。絵を描いているうちにどんどんアイデアが出てくる。中尾さんは画力があって、自分の手で絵を描かれます。そこからの発想には子どもの力に近いものがあって感動しました」
 
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さらに、現在79歳の越田理事長は自分自身がデジタルベースで思考するタイプだと明かし、33歳と若い中尾さんがデジタルアンチ的な発想を持ちながら、新しいものも使いこなし、うまくバランスをとっている、と感心しきり。中尾さんはその指摘に対して、「人が手を動かして作ることの熱量に価値が生まれたらいいなと感じています」と応じました。
 
「AI がデジタル的に判定する"いい・わるい"のどちらでもない"もやもや"についてはどう思いますか?」との越田理事長の投げかけには、「ロジカルの限界がそろそろ語られはじめていて、アートシンキング、デザインシンキングとか、そういう風潮が広がっていけばデザイナーとしてはありがたい。そっちへ行け、と思っています」。
 
参加者からは「和のデザインが和である必要性は何か、などと考え始めると難しい。職人の作るものが一周回って光る時代だからこそ、手作りの象徴として"和"が注目の要素になっているのでは」という感想も出ました。
 
「自分自身は、和でなければいけないとは思っていなくて、手作りが好きで世界の民芸品も好き。今は日本(の伝統文化や手仕事)を応援したい人も増えていて、SNSなどで仲間が増えやすい環境があるのもいいですね」
 
気負わずチャレンジを続ける先に、どんな和差積商が現れるのか―楽しみでなりません。
 

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